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|ソン・ホンギュ 著,橋本智保 訳|新泉社 刊|2022年1月26日|256ページ|
〈僕は自分の体に残っている傷跡の起源を知らない。〉
「僕には故郷がない。
懐かしい原風景もなければ、見慣れたものにまつわる記憶もなかった。
だから、どこにいても僕にとっては故郷であり母国だ。
誰であろうと僕の旧友であり家族だ。」
その日、僕はこの世界を養子に迎えることにした――。
朝鮮戦争の数十年後、ソウルのイスラーム寺院周辺のみすぼらしい街。
孤児院を転々としていた少年は、精肉店を営む老トルコ人に引き取られる。
朝鮮戦争時に国連軍に従軍した老人は、休戦後も故郷に帰らず韓国に残り、敬虔なムスリムなのに豚肉を売って生計を立てている。
家族や故郷を失い、心身に深い傷を負った人たちが集う街で暮らすなかで、少年は固く閉ざしていた心の扉を徐々に開いていく。
「僕はハサンおじさんに訊きたかった。
僕の体にある傷跡は、なにを守ろうとしてできたものなの? 僕にも守るべき魂があったの?
もしあったとしたら、僕の魂はなぜいまも貧しいの? なぜ僕は肉体も魂も傷ついたの?
僕の魂は肉体を守ってやれなかったし、肉体は魂を守ってくれなかった。
ということは、僕の魂と肉体はずっとばらばらだったのだろうか――。」
韓国でロングセラー。英語版とトルコ語版も翻訳出版された話題作
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