運命を切り拓き、すべての生命を包み込む大河小説

19世紀末から20世紀半ばまでの朝鮮半島、中国東北部(旧満州)、そして日本を舞台に描いた大河小説『土地』全20巻。
近代史を背景に、様々な立場・職業・境遇の愛と恋、葛藤、悲しみ、喜び、苦難を丹念に描き、生きることの意味を深く問いかける本作は、韓国でロングセラーとなっている。

『土地』特別ウェブサイト掲載
「監修者・訳者のことば」はこちらから

・『完全版 土地』刊行に向けての想い(監修者 金正出)
・作家を超える小説『土地』(翻訳者 吉川凪)
・『完全版 土地』出版記念会におけるごあいさつ(翻訳者 清水知佐子)

【1巻あらすじ】
朝鮮半島南部の農村平沙里に君臨する大地主崔参判家を軸とした壮大な物語は、朝鮮王朝末期の1897年の秋夕に始まる。村の日常には小さな諍いもあるが、村人や参判家の使用人たちは、各々の葛藤を抱えながらも懸命に生きていた。しかし、参判家で起きた前代未聞の事件が人々を動揺させる。そんな中でも自分の殻に閉じこもり続ける参判家の当主致修は、母尹氏夫人との間に長年にわたる確執があり、その発端となった暗い秘密も徐々に明かされる。一方では、参判家の乗っ取りを企てる者たちがうごめいていたが、致修の幼い一人娘西姫は、まだ自分を待ち受ける過酷な運命を知らない。

【著者プロフィール】
朴景利(ぱく きょんに):1926年、慶尚南道統営市生まれ。晋州高等女学校、ソウル家庭保育師範学校(世宗大学の前身)卒。1955年に短編小説「計算」でデビュー、1957年に短編「不信時代」で 『現代文学』新人賞受賞。以後、次々と長編作品を発表し、各種文学賞を受 賞して実力派の作家としての地位を確かなものにすると同時に、韓国の女性作家の草分け的存在となった。1969年から25年間にわたって書き継がれた大河小説『土地』は代表作で あり、韓国現代文学における最も優れた作品の一つと評される。また「国民文学」として韓国で愛されてきたベストセラー小説でもある。1994年に『土地』が完結した後も小説、詩、エッセイを書き続けた。晩年には環境問題に関心を深め、江原道原州の自宅菜園で有機栽培などしながら、意欲的に執筆を続けた。2008年没。享年81歳。

【監修者プロフィール】
金正出(きむ じょんちゅる):1946年青森県生まれ。1970年北海道大学医学部卒業。現在、美野里病院(茨城県小美玉市)院長。医療法人社団「正信会」理事長、社会福祉法人「青丘」理事長、青丘学院つくば中学校・高等学校理事長も務める。訳書に『夢と挑戦』(彩流社)などがある。

【訳者プロフィール】
吉川凪(よしかわ なぎ):大阪生まれ。新聞社勤務の後、韓国に留学。仁荷大学博士課程修了。文学博士。著書『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ』、訳書『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、『都市は何によってできているのか』、『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう』、『アンダー、サンダー、テンダー』など。