「日韓同時代人の対話シリーズ」が始まります

韓国と日本の関係は、時代の波に翻弄され、あるときは近づき、またあるときは遠くなりながら綿々と続いてきました。これからもきっと、近づいたり遠ざかったりを繰り返すことでしょう。現実社会に生きる生身の人間であるかぎり、私たちもその影響から逃れることはできません。

それでもなお、私たちは、常にもうひとつの視点を忘れずにいたいと思います。
〈ひとり〉と〈ひとり〉が出会って対話するとき、また真摯に相手の思いを受け取り、伝えようとするとき、自分の奥にある何かが目覚め、ほんの少し、私たちの何かが変わります。別の言語、別の文化を持っている個性どうしであれば、なおさらその相互作用は大きくなることでしょう。

この個と個の出会いから何が生まれるのか、私たちにもまだわかりません。読者の皆さんと一緒に見届けたいという願いで、この一冊をお届けいたします。

(このシリーズは、韓国のウィズダムハウス出版社との契約で韓国語が同時刊行されます)


【第一弾 谷川俊太郎×申庚林 編】
『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう』

いまこそ、詩のことばで語りあおう。
日韓を代表する詩人ふたりによる未発表対詩のほか、
代表的な詩作品、エッセイを収録。

ニューズでは
国と国が血を流しているが
天気予報では
気まぐれな雲が
はにかむ地球にヴェールをかぶせている
         谷川俊太郎

休戦ラインは春でも夜風が冷たいけれど
咲き始めた野の花たちは
互いに戯れつつ
両側から われ先に
鉄条網を這い上がる
         申庚林