窮乏する時代にも互いを思いやる心がある
西姫も親族も強く望む允国との結婚に良絃はついに決断を下す

18巻 あらすじ
日本の敗色は今や隠しようがなく、朝鮮でもすべての物資が欠乏している。
キリスト教徒の一斉検挙で投獄された麗玉は釈放されたものの、その凄惨な姿に明姫は衝撃を受けた。
栄光への愛と、兄嫁との葛藤に苦しむ良絃は医師となって家を出た。
晋州で寮に入り高女に通う尚義は、天皇主義者の教師に反発する内向的な少女に成長している。
統営では趙俊九が醜い様で生涯の幕を閉じ、モンチは周囲の心配をよそに子持ちの寡婦媌媌花に求婚する。
任明彬は静養のために智異山を訪れ、輝は徴用を避けて山に戻った。独立運動に関わる若者も山に逃れてきたが、過激なことを企んでいるのではないかと海道士は警戒の目を向ける。

目次
第五部 第三篇 底なし沼
 一章 消息 
 二章 山へ 
 三章 媌花一家 
 四章 赤と黒 
 五章 愛の彼岸 
 六章 昔の芝生 

第五部 第四篇 純潔と膏血
 一章 山は紅葉しているけれど

訳注
訳者解説


著:朴景利
1926年、慶尚南道統営市生まれ。
晋州高等女学校、ソウル家庭保育師範学校(世宗大学の前身)卒。
1955年に短編小説「計算」でデビュー、1957年に短編「不信時代」で 『現代文学』新人賞受賞。以後、次々と長編作品を発表し、各種文学賞を受 賞して実力派の作家としての地位を確かなものにすると同時に、韓国の女性作家の草分け的存在となった。
1969年から25年間にわたって書き継がれた大河小説『土地』は代表作であり、韓国現代文学における最も優れた作品の一つと評される。また「国民文学」として韓国で愛されてきたベストセラー小説でもある。
1994年に『土地』が完結した後も小説、詩、エッセイを書き続けた。晩年には環境問題に関心を深め、江原道原州の自宅菜園で有機栽培などしながら、意欲的に執筆を続けた。2008年没。享年81歳。


監修:金正出
1946年青森県生まれ。1970年北海道大学医学部卒業。
現在、美野里病院(茨城県小美玉市)院長。医療法人社団「正信会」理事長、社会福祉法人「青丘」理事長、青丘学院つくば中学校・高等学校理事長も務める。
著書に『二つの国、二つの文化を生きる』(講談社ビーシー)、訳書に『夢と挑戦』(彩流社)などがある


翻訳:吉川凪
仁荷大学に留学、博士課程修了。文学博士。
著書『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ』、訳書『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、『都市は何によってできているのか』、『アンダー、サンダー、テンダー』、『となりのヨンヒさん』、『広場』など。
キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。