「人」から始まり「人」で終わる連作詩集
言葉遊びで描く喜びと悲しみ
「会う時はアンニョンでいたくてアンニョン
別れる時はアンニョンではいられなくてアンニョン
待つ人が路地にいた。
待つ時までいた」(「待つ人」より)
言葉遊びに気を取られているうちに周囲の時空が歪み始め、
自分がいつの間にか韓国の、あるいは日本にも共通した
生きづらい世の光景を眺めていることに気づいて愕然とする。
そして、この詩人はただものではないらしいと、
改めて認識するだろう。 ──訳者解説より
2023年5月31日刊行|四六変型判|並製|152頁|978-4-910214-45-0
【目次】
人
よく考える人
望ましい人
凍りつく人
待つ人
持つ人
落ちた人
読む人
いい人
昔の人
都会人
手を離す
決心した人
散歩する人
よろける人
一流学
偉い人恋人
凝視する人
行ってきた人
線を引く人
オレンジ色の少年
猶予する人
一九五八年戌年生まれ
計算する人
無人工場
三十歳
うるさい顔
糸車は元来、文来
三回言う人
あと一歩
人
付録
しない
水滴効果
解説 言葉遊びで描く喜びと悲しみ
・ためし読みはこちらから【書評】
都市で暮らし、行き交う人びとに言葉遊びで想像を膨らませる
評・友田とん(出版レーベル「代わりに読む人」代表)
【前書きなど】
詩人の言葉
人に生まれて
人を理解し人を誤解しました。
人だから理解し人だから誤解しました。
人を、ついに人となりを考えるようになりました。
お父さん、お母さん、元気でいて下さい。
僕はようやく
息子になりました。
二〇一八年真夏に
【著者プロフィール】
オ・ウン(呉 銀) (著/文)
1982年韓国全羅北道井邑生まれ。
2002年『現代詩』にて詩人としてデビュー。
詩集に『ホテルタッセルの豚たち』、『私たちは雰囲気を愛してる』、『有から有』、『左手は心が痛い』、青少年詩集『心の仕事』、散文集に『君と僕と黄色』、『なぐさめ』など。
朴寅煥文学賞、具常詩文学賞、現代詩作品賞、大山文学賞などを受賞。
吉川凪 (ヨシカワ ナギ) (翻訳)
仁荷大学国文科大学院で韓国近代文学を専攻。文学博士。
著書に『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ─高漢容と仲間たち』、訳書に谷川俊太郎・申庚林『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう』、金恵順『死の自叙伝』、呉圭原『私の頭の中まで入ってきた泥棒』、鄭芝溶『むくいぬ』、共訳に『地球にステイ!─多国籍アンソロジー詩集』、イオアナ・モルプルゴ編『月の光がクジラの背中を洗うとき─ 48カ国108名の詩人によるパンデミック時代の連歌』などがある。
キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。