私たちは共に、絶えず声を上げ、
お互いを思いやり、
しっかりと手を携えて生きていける

韓国SFの話題作『となりのヨンヒさん』著者チョン・ソヨンによる初の邦訳エッセイ集

「この社会で女性として生きるには、
 絶えず自分を奮い立たせなければならない。
 自分の発するほぼすべての社会的発言に「女だから」という
 フィルターをかけられることを覚悟しなければならない。
 韓国で発言する女性として生きるということは、
 そんな覚悟を持って、それでも次の世代のために
 女性の居場所をひとつでも多く確保できるように、
 発言し、主張し続けるということだ。
 世間が耳を傾けずにはいられなくなるまで」
――本書より

ためし読みはこちらから

【目次】
はじめに
第一部 信念を軽んじる世界で
第二部 発言する女性として生きるということ
第三部 私たちが物語になるとき
終わりに これが私の遺言
日本の読者の皆様へ
訳者あとがき

【前書き】
 本書は、これまで私がさまざまな紙面に寄稿したコラム、エッセイ、解説を集めたものである。コラムとエッセイは、テーマや雰囲気が多少重複する数編を除いてはなるべくすべて載せることにした。韓国社会一般に関するテーマは第一部、フェミニズムに関するテーマは第二部に収録した。その他、拙訳書で書いた訳者あとがきと他の作家の小説に寄せた作品解説は、悩んだ末に数編のみを抜粋して第三部に載せることにした。読者が本書を読んだあと、私が翻訳または解説を手がけた書籍を手に取っていただくきっかけになればと思う。
 本書には、私が専業作家として、兼業作家として、そして弁護士として書いたものがまんべんなく収録されている。長きにわたって書いてきたものを改めて読んでみると、文章を書く者として私が言いたいことと、一市民として誰かは言うべきだと思った言葉が幾度も重なっていた。それは幸いなことだと思う。さまざまな紙面で執筆しながら、悪意のある書き込みを目にしたり、見ず知らずの方から励ましの声をいただいたりもした。不思議なことだ。ごくプライベートな話もあれば、当時の社会情勢を色濃く反映したものもある。文章というものを通してここまで率直に自分をさらけ出すということは、やや怖くもあるが、やはり素晴らしいことだと思う。
 そんな重みが本書を通じて読者のもとに届き、読者の人生に残ることを願ってやまない。

二〇二一年十一月       チョン・ソヨン

【著者プロフィール】
著:チョン・ソヨン
ソウル大学で社会福祉学と哲学を専攻。大学在学中にストーリーを担当した漫画「宇宙流」が2005年の「科学技術創作文芸」で佳作を受賞し、作家としてのスタートを切った。
小説の執筆と翻訳を並行する傍ら、延世大学法学専門大学院を卒業し、現在は弁護士としても活動している。〈韓国SF作家連帯〉初代代表。
訳書に『となりのヨンヒさん』(吉川凪訳、集英社)、「ミジョンの未定の箱」(『最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集』収、古川綾子訳、河出書房新社)がある。

翻訳:李聖和 (イ ソンファ)
大阪生まれ。関西大学法学部卒業後、会社勤務を経て韓国へ渡り韓国外国語大学通訳翻訳大学院修士課程修了。現在は企業内にて通訳・翻訳業務に従事。
第二回「日本語で読みたい韓国の本翻訳コンクール」にて「静かな事件」で最優秀賞受賞。訳書に『静かな事件』(クオン)、『わたしの心が傷つかないように』(日本実業出版社)、『オリオンと林檎』(共訳/書肆侃侃房)など。