厳しさを増す戦時下にもすれ違う恋心を胸に苦悩する人たちがいる
懸命に生きる日々 人々の希望はどこに?



17巻 あらすじ
日中戦争に行き詰まった日本は仏領インドシナに進駐し、朝鮮人への抑圧も増している。
拘束される日が近いと予感する吉祥は、智異山周辺の独立運動組織の解散を決めた。
新京で自動車整備工場を営んでいた弘は、妻の軽率な行為から夫婦共に密輸容疑で朝鮮に連行された。

これを機に工場を畳んだ弘は単身、満州に戻るつもりだ。統営に弘を訪ねた栄光は、栄善夫婦を通じて父・寛洙につながる人たちと交流を深める。
平沙里では鳳基老人が世を去ったが、錫の母ら女たちは健在だ。
崔参判家を巡る人々の運命は、世代を超えて複雑に絡み合っていく。
他方、ハルビンで偶然に燦夏と出会った仁実は、十余年ぶりに緒方と再会する。



2023年2月10日刊行/四六判/424ページ


目次

第五部 第一篇 魂魄の帰郷
 六章 解体

第五部 第二篇 運命的なもの
 一章 密輸事件
 二章 松花江の春
 三章 ソウルと東京
 四章 明井里の椿
 五章 荒れ果てた故郷

訳注
訳者解説



朴景利

1926年、慶尚南道統営市生まれ。
晋州高等女学校、ソウル家庭保育師範学校(世宗大学の前身)卒。
1955年に短編小説「計算」でデビュー、1957年に短編「不信時代」で 『現代文学』新人賞受賞。以後、次々と長編作品を発表し、各種文学賞を受 賞して実力派の作家としての地位を確かなものにすると同時に、韓国の女性作家の草分け的存在となった。
1969年から25年間にわたって書き継がれた大河小説『土地』は代表作であり、韓国現代文学における最も優れた作品の一つと評される。また「国民文学」として韓国で愛されてきたベストセラー小説でもある。
1994年に『土地』が完結した後も小説、詩、エッセイを書き続けた。晩年には環境問題に関心を深め、江原道原州の自宅菜園で有機栽培などしながら、意欲的に執筆を続けた。2008年没。享年81歳。


金正出監修

1946年青森県生まれ。1970年北海道大学医学部卒業。
現在、美野里病院(茨城県小美玉市)院長。医療法人社団「正信会」理事長、社会福祉法人「青丘」理事長、青丘学院つくば中学校・高等学校理事長も務める。
著書に『二つの国、二つの文化を生きる』(講談社ビーシー)、訳書に『夢と挑戦』(彩流社)などがある


清水知佐子翻訳

和歌山生まれ。大阪外国語大学朝鮮語学科卒業。在学中に延世大学韓国語学堂に留学。読売新聞記者などを経て翻訳に携わる。
訳書にイ・ギホ『原州通信』、イ・ミギョン『クモンカゲ 韓国の小さなよろず屋』、キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』など。
シン・ソンミ『真夜中のちいさなようせい』で第69回産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞。