|林晟一 著|CCCメディアハウス 刊|2022年12月24日|304ページ|



日本人と外国人がともに生きるニッポンの過去・現在・未来。

「あいつ、×××人よ」
ビルの外国人オーナーをなじる在日コリアン2世の母。
「日本語もわからないくせに働いてるんじゃねえーっ!」
外国人店員をディスる客を見てみぬふりする、在日コリアン3世の私。

外国人労働者を受け入れてきた日本は、「移民国家」にかじを切りつつあるといわれる。けれど、日本における「移民」の歴史は決して浅いものではない。古くは在日コリアン(在日韓国・朝鮮人)と華僑がいるし、今や4世、5世、そして6世の時代に入った。また、バブル期以後は南米から「日系人」が迎えられ、今では2世、3世の定住化も進んだ。古くからの移民とその子孫が、日本社会に広く根づいているのだ。将来的にも、多くの「ニューカマー」が労働者や生活者として定住することになるだろう。

では、在日コリアンは、どのようにして日本社会の一員となってきたのか。粘り強い活動をつうじて得たものは何か。まだ得られていないものは何か。「在日」は「ニューカマー」と何がちがい、彼らとどう接するべきなのか。そもそも、社会の統合とは何なのだろう。

在日コリアン3世の著者は、日本人とニューカマーの間に立つ「境界人」の「在日」には、ニッポンの過去・現在・未来を織りなす責任があるという。本書は、「在日」のこれまでとこれから、多文化共生、社会の統合、そして日本人の再定義について考えをめぐらす。それは、日本人や日本社会はもちろん、古くからの移民たちへ送るエールでもある。

私たちは、だれかにとって頼りがいある存在だろうか。

目次
プロローグ──真夜中のヘイトスピーチ
第1章 「駆除」の時代を生きぬくヒント
第2章 焼け跡の生命力
第3章 生きる条件
第4章 声なき「発言」と英雄
第5章 明るい未来へ
第6章 差別解消カスケード
第7章 未来の足音
第8章 パラレルワールド
第9章 「御守り」としての歴史
終章 ささやかな希望、死なない明日
エピローグ──敗北宣言はまだ早い