|玄徳 著,鄭玄雄 画,新倉朗子 訳|作品社 刊|2022年4月25日|200ページ|



1930年代、ソウル近郊の村。少年ノマと、その友だちトルトリ、ヨンイ、そしてキドンイが繰り広げる日常の物語。貧しくも、心豊かな子ども時代。どこか懐かしい気持ちになる、大人のための童話集。


 ノマはいたずら好きでやんちゃな五、六歳くらいの男の子だ。ノマは次々に遊びをみつけては仲間を引っぱっていく。おもちゃがなくてもボール紙を切り抜いて汽車や小犬を作り出す創意工夫のできる賢さもそなえている。大好きなお母さんのお使いをしたり、友だちが誘いに来てもがまんしてお手伝いをする優しい子でもある。
 路地で遊ぶノマやトルトリやヨンイの家の暮らし向きはゴムの靴一つ新調するのも困難なほどで、それに比べるとキドンイの家は裕福で(…)それでも「ウサギと自動車」に見るように、いつしかキドンイも仲間に入っていっしょに遊ぶようになる。ひとりでに解決する子どもの世界に、読者はほっと心の温まる思いがするのではなかろうか。――「訳者解説」より