生きる資格のない人間などおらず、誰でも堂々と欲望を抱いていいのだ

社会的に認められた職業や地位にある人々が作り出す世界と、就職はおろか外出すらままならない友人たちが閉じ込められている世界。
その二つの世界の狭間に立ち、行き来しながら、考え、弁論し、表現する――。
作家、弁護士、パフォーマーなど多方面で活躍するキム・ウォニョンの自伝的エッセイ。

「この本は、人生の綱渡りの秘訣を紹介するような自己啓発書ではありません。
綱渡りをするくらいの勇気を出さないと社会の構成員として認めてもらえなかった人たちについての証言です。
20代だったわたしは証人としてこの本を書きました」

日本語版序文「綱の上で」より)

>>ためし読みはこちらから

|キム・ウォニョン著、牧野美加 訳|2022年11月30日|324ページ|


●著者キム・ウォニョン インタビュー
「作家、キム・ウォニョン――書き、踊り、欲望せよ」

●キム・ウォニョンの本 続々と邦訳刊行!
2021年韓国出版文化賞受賞作
『サイボーグになる―テクノロジーと障害、わたしたちの不完全さについて』
キム・チョヨプとの共著|岩波書店|2022年11月刊行

2018年「今年の人権書」受賞作
『だれも私たちに「失格の烙印」を押すことはできない』
小学館|2022年12月刊行

-----------------------------------------------------
K-BOOK PASSは“ 時差のない本の旅”を提案するシリーズです。この一冊から小説、詩、エッセイなど、さまざまなK-BOOKの世界を気軽にお楽しみください。


目次

日本語版序文 綱の上で
改訂版序文  欲望することを恐れないならば
はじめに   ちっぽけで弱い存在の、大胆で熱い告白を熱望する

一 ガラスのような身体、棘のような心
  地下鉄に乗った障害者
  見えない存在
  わたしは骨形成不全症だ
  月明かりだけが差し込んでいた思春期
  学びが開いてくれた新しい世界、けれど窮屈な世界
  希望と限界のはざま
  風景になった人たち
  舞台の上、わたしが世の中に姿を現す瞬間
  十七歳の春
  わたしの心と身体が一つになるまで

二 全身全霊で世界の中へ
  脱出を夢見る
  外の世界のとてつもない高さ
  「特殊」の世界と「一般」の世界
  「許可」してもらわなければならない権利
  スーパー障害者になること
  一番違ったけれど一番親しかった友人、チョン・ミョンニュン

三 新しい身体の記憶づくり
  墜落するものには「車輪」がある
  ずっとこんなふうに生きていくわけにはいかない
  地下鉄の線路の上に横たわった人たち
  身体は変えられないが社会は変えられる
  障害を克服した障害者?
  わたしの身体は治らなかったが、癒えた
  「カミングアウト」が引き出した変化

四 二つの世界のはざまで
  カントを読む、物乞いをする障害者
  分離された世界
  非正常の世界の地獄のような話
  展示される人たちと見物する人たち
  優越感、その残忍な快楽
  共に雨に打たれる連帯

五 わたしは「セクシーな」障害者でありたい
  直立歩行のセクシーさについて
  クールな人間ではなく、ただの人間ではだめなのか
  「僕の脚を見てくれ」
  運命に素直に従わない身体
  「悪い」身体の叫ぶ自由
  自分の人生なら熱く

六 水槽の中の脳、主人公になる
  いまだに靴紐も結べないけれど
  車椅子の上のマクベス
  夢の大きさ
  客席を舞台に変える、勇気ある人々
  わたしに与えられた自由の重さ
  無力な二十代、そして八十八万ウォンの障害者
  「でしゃばるな」という古びた命令の前で
  わたしとあなたの身体のための証言

おわりに   わたしたちには怒りが必要だ
あとがき   そして十年後

付  録   障害者問題について深く読む
       参考文献

訳者あとがき

著者プロフィール

著者:キム・ウォニョン(金源永)
1982年生まれ。骨形成不全症のため14歳まで病院と家だけで過ごす。
小卒認定試験に合格し、障害者向け特別支援学校の中等部、一般の高校を経て、ソウル大学社会科学部社会学科を卒業。
同大学ロースクール卒業後、国家人権委員会で働く。
現在は作家、パフォーマー、弁護士として活動している。
著書に『だれも私たちに「失格の烙印」を押すことはできない』(五十嵐真希訳、小学館)、共著に『人文医学』、『サイボーグになる―テクノロジーと障害、わたしたちの不
完全さについて』(牧野美加訳、岩波書店)がある。演劇「愛と友情における差別禁止及び権利救済に関する法律」、「人情闘争―芸術家編」などに出演した。
車椅子ユーザー。


訳者:牧野 美加
1968年、大阪生まれ。
釜慶大学言語教育院で韓国語を学んだあと、新聞記事や広報誌の翻訳に携わる。
第1回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」最優秀賞受賞。
訳書にチャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』(クオン)、キム・チョヨプ、キム・ウォニョン『サイボーグになる―テクノロジーと障害、わたしたちの不完全さについて』(岩波書店)、共訳書にチェ・ウニョン『ショウコの微笑』、ソ・ミョンスク『オルレ 道をつなぐ』(いずれもクオン)がある。