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虐殺と歴史、記憶の抹殺。
その歴史の底で沈黙する者たちの
“悲しみ”を、夢と現実を往還する
苛烈な想像力によって解き放つ──
大長編小説『火山島』の著者が「これだけは書かなければ」という想いを込めた最新作。済州島四・三事件をテーマに書き続ける在日の老作家K。
若き日に北朝鮮関係の地下組織に参加したものの離脱、その後の精神的危機とさまよいを回想する「消された孤独」。
韓国語と日本語のはざまで二つに割れた存在に苦しみつつ韓国舞踊を学び、島を想う在日女性との対話を描いた「満月の下の赤い海」。
四十二年ぶりとなる自らの故国・韓国訪問と済州での取材を通じて、語りえない記憶の真実に耳を澄ませる「地の疼き」。
三編の小説と対談を収録。
金石範 著|
344ページ|2022年7月25日刊行目次
消された孤独 (初出「すばる」2017年10月号)
満月の下の赤い海(初出「すばる」2020年7月号)
地の疼き (初出「すばる」2022年5月号、6月号)
対談 これだけは書かなければ
著者プロフィール
金石範1925年、済州島出身の両親のもと大阪市で生まれる。
代表作に「鴉の死」、『火山島』(大佛次郎賞・毎日芸術賞受賞)、『死者は地上に』、『過去からの行進』、『海の底から』など。
今春には最新作「地の疼き」(本書所収)を「すばる」5月号、6月号で発表した。