|キム・ソヨン 著,チャン・ホ イラスト,梁玉順 訳,吉仲貴美子 訳|影書房 刊|2021年7月29日|234ページ|



両班家の娘14歳のミョンヘ。 
両親はいつまでも子ども扱いする一方で、「早く嫁に行け」とうるさい。

東京に留学中で、地域で一番「文明開化」した兄の口添えで、「結婚までの少しのあいだ」ミョンヘも首都・京城の女学校へ通えることになった。
京城では、少々口は悪いが「結婚なんてバカみたいなまねは絶対しない」と言うナッキョンや、女性ながら米国留学も果たし医師の仕事を通じて日々貧しい人を助けるシン先生と出会い、

ミョンヘも自分の生きる道について少しずつ考えを深めていく。

しかし、時は日本の植民地支配が9年目に入った1919年。

厳しい武断統治が続き、朝鮮の人びとは自由と独立をもとめて立ち上がる準備を進めていた。

そしてついに3月1日、京城のパゴダ公園には数千人の学生や民衆が集まり「朝鮮独立万歳!」をさけび始める。この「3.1独立運動」はその後、朝鮮全土へと拡大していく。
そんな時代のうねりの中で、ミョンヘが見たものとは……。

家父長的で男尊女卑の価値観が根強く残る一方で近代化の波が押し寄せる朝鮮を舞台に、

悩みながらも時代の制約をのりこえ、旧習に立ち向かって医師になる夢を育てていく少女を描く韓国のYA小説。

第11回チャンビ「すぐれた子どもの本」創作部門大賞受賞作。
ボールペンのみで描かれた繊細で深みのある絵も、作品と一体となって叙情的な美しさを添える。