|チョン・イヒョン 著,橋本智保 訳|新泉社 刊|2021年4月6日|448ページ|



あなたはわたしを知らない、
だれもわたしを知らない――。

巧みなストーリー展開と観察眼で都市生活者の心の機微を描き、圧倒的支持を集めるチョン・イヒョンの話題作。
現代韓国文学を代表する作家のロングセラー長篇、待望の邦訳刊行

 「日曜日は一週間のうちの一日にすぎない。でも、そうでない日曜日もある」
 十一歳の少女ユジの失踪をきっかけに、次第に明るみになっていく家族それぞれの秘密。
 一人ひとりのアイデンティティの揺らぎや個々に抱えた複雑な事情、その内面を深く掘り下げ、現代社会と家族の問題を鋭い視点で緻密に描いた長篇作。
 ソウルの江南を主な舞台としつつ、在韓華僑のほか中国朝鮮族なども題材に、地勢的にも幅を広げて描くなかで、社会の隅で孤独を抱えながら生きる多様な人びとの姿をあぶり出していく。
 韓国で大きな反響を呼んだ話題作、ついに日本上陸!

《本作は「ホーム」でも「家族」でもない「ハウス」に暮らす個人の話だ。家族の絆を取り戻すようなホームドラマではない。
 著者も言っているように「家族小説ではなく、家族の中の個人を書いたもの」であり、「何もかも見せているようで隠し、隠しているようでも真実を見せる個人を、家族というつながりのなかで観察した」物語である。
 家族はお互いわかり合えない集団だという認識から出発し、少しずつ歩み寄る姿勢を見せている。すると、家族というつながりの向こうに孤独な存在である人間が見えてくる。…………訳者》