정유정(チョン・ユジョン) 著 | ウネンナム | 2021.06刊行 | 524頁

『七年の夜』(カン・バンファ訳、書肆侃侃房)『種の起源』(カン・バンファ訳、ハヤカワポケットミステリ)の著者、チョン・ユジョンの待望の長編小説。

バスも通らない田舎の廃屋で、アヒルたちのえさを作る一人の女の後ろ姿から始まる。その女と娘、そして、その家を訪ねてきた一人の男の顔を照らす。対面し、笑ってはいるけれど、彼らが追い求める幸福は互いに違っていて、徐々に不協和音を奏ではじめる。

その奇妙な不協和音は沼から聞こえてくる奇怪なアヒルの声と共鳴し、不安の影を落とす。彼らはそれぞれの幸せをつかむために努力する。だが、もがけばもがくほど深みにはまっていく沼のように、影は次第に深い暗闇へと家族を引き込んでいく。