|심채경(シム・チェギョン)著|문학동네 刊|2021.2|272ページ|

科学雑誌『ネイチャー』が、月探査を率いる若い研究者5人のうちの1人に選んだ天文学者シム・チェギョンのエッセイ。
天文学、惑星科学者……。そんな言葉を聞くと、とっつきにくく、難しそうだと思うかもしれない。ところがシム・チェギョンの書く天文学は予想と少し違う。出版社文学トンネの編集者は、彼女が新聞にたった一度だけ寄稿した文章を偶然目にし、会いたいと連絡。ウェブマガジンへの連載や本の出版につながったという。

「天文学者は星を見ない」というタイトルを見た人からは「深い意味がありそうだ」「何かの比喩かも」と言われることが多いというが、彼女の同僚たちは「本当にそうだ」と口を揃える。星を見るのは1年に何日かで、ほとんどは分析に時間を費やす。天文学者といっても研究分野によっては生涯望遠鏡を見ることがない場合もあると話す。
そんな天文学者の研究や生活についてを書いたこの本には、そうは言っても宇宙や星に関する話が多く登場する。が、天文学者は「星だけ」を見ているのではないと読み進めるとわかってくる。天文学者であると同時に非正規の研究員でもあり、出張の領収書の整理だってあれこれ忙しい(本人はこの時間がとても好きだというが)。また、女性であり、妻であり、2児の母でもある。そんな著者がユーモアまで交えて書いた、宇宙に興味がある人も、そうでない人も満足できる一冊。