獄中の吉祥を案じる西姫と還国に平穏は訪れるのか
新しい局面の予感で第三部が幕を閉じる

【12巻あらすじ】

還国と共に西大門刑務所で吉祥に面会した西姫は、その帰途、釜山で盲腸炎になり手術を受けた。晋州から駆けつけた朴医師はなぜか取り乱している。その晋州ではソリムの縁談が周囲に波紋を広げ、彼女に思いを寄せていた還国と舜徹も心を乱す。
独立運動に関わる錫と寛洙は執拗に警察に追われ、満州や沿海州の運動家たちも身動きが取れない。
龍井を訪れた恵観は周甲と別れてあてどない旅に出る。
平沙里では紀花が痛ましい最期を迎え、娘の良鉉は西姫の元で還国・允国の妹として暮らす。
朝鮮を離れている良鉉の父相鉉は、明姫に意外な手紙を送る。
龍が世を去り、息子の弘は龍井に移り住む決意を固める。

【著者プロフィール】
朴景利(ぱく きょんに)

1926年、慶尚南道統営市生まれ。晋州高等女学校、ソウル家庭保育師範学校(世宗大学の前身)卒。1955年に短編小説「計算」でデビュー、1957年に短編「不信時代」で 『現代文学』新人賞受賞。以後、次々と長編作品を発表し、各種文学賞を受 賞して実力派の作家としての地位を確かなものにすると同時に、韓国の女性作家の草分け的存在となった。1969年から25年間にわたって書き継がれた大河小説『土地』は代表作で あり、韓国現代文学における最も優れた作品の一つと評される。また「国民文学」として韓国で愛されてきたベストセラー小説でもある。1994年に『土地』が完結した後も小説、詩、エッセイを書き続けた。晩年には環境問題に関心を深め、江原道原州の自宅菜園で有機栽培などしながら、意欲的に執筆を続けた。2008年没。享年81歳。

【監修者プロフィール】
金正出(きむ じょんちゅる)

1946年青森県生まれ。1970年北海道大学医学部卒業。現在、美野里病院(茨城県小美玉市)院長。医療法人社団「正信会」理事長、社会福祉法人「青丘」理事長、青丘学院つくば中学校・高等学校理事長も務める。訳書に『夢と挑戦』(彩流社)などがある。

【訳者プロフィール】
吉川凪(よしかわ なぎ)

仁荷大学に留学、博士課程修了。文学博士。
著書『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ』、訳書『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、『都市は何によってできているのか』、『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう』、『アンダー、サンダー、テンダー』、『となりのヨンヒさん』、『広場』など。
キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。