小説家パク・ソルメの二つ目の長編小説。タイトルである「百行を書きたい」は日本の前衛芸術家の寺山修司の著書に収録された同名の詩から持ってきた。
話を導くのは21歳女である「私」の声だ。注目すべきは離婚した母親と一緒に暮らし、大学生活に適応できず再び故郷に帰ってきたなど、くだらなくて身辺ではなく、「私」を取り囲む背景と周辺の人々だ。

「私」が住んでいる海辺の都市の近くには人工の島がある。遊園地やショッピングモールを建てるために居住地を爆破させて作った人工島から追い出された土着民たちは、住む所も仕事もないまま自ら命を絶つ。彼らには名前がない。死んでから名前を探すだけだ。