著者(漫画家)が80歳を過ぎた母親から聞いた家族の物語。かといって、単に一家族がたどってきた物語ではなく、母とその母が生きた激動の時代の歴史、村の情景や村人の生活、そこで起こった大小さまざまな事件が映し出されている。
日本の植民地時代に生まれた著者の母は、朝鮮戦争の時に南側に避難し、そのまま韓国に定着する。そして著者と生活を共にしながら、ちょっとした出来事を見たり聞いたりするたびに故郷を懐かしみ、その思い出を著者に少しずつ語っていく。あたかもひとつひとつ心の奥底から手繰り寄せるかのような、素朴ながらも生き生きとした咸鏡南道訛りの語り口は、読者の想像力を掻きたてる。「世の中から消えてしまってはいけない本」として、韓国の放送局tvNの「役に立たない雑学事典」という番組のなかで紹介され、改訂本が刊行された。