運命を切り拓き、すべての生命を包み込む大河小説

19世紀末から20世紀半ばまでの朝鮮半島、中国東北部(旧満州)、そして日本を舞台に描いた大河小説『土地』全20巻。
近代史を背景に、様々な立場・職業・境遇の愛と恋、葛藤、悲しみ、喜び、苦難を丹念に描き、生きることの意味を深く問いかける本作は、韓国でロングセラーとなっている。

【7巻あらすじ】
崔参判家を取り戻す西姫の執念は彼女を孤独にする
新たに絡み合う平沙里の人々の運命

周囲の冷たい視線を退けて吉祥を夫にした西姫は、故郷に帰るためなら親日派と見られても平気だ。しかし、独立運動に憧れる吉祥の気持ちが離れていくことに苦しむ。
朝鮮では九泉も関わって、東学の残党を糾合した独立運動が画策されるが、先行きは見えない。
恵観和尚は、技生・紀花となった鳳順を伴い、独立運動の現状を確かめるために間島にやってきた。懐かしい人々と再会した鳳順は、流れた歳月を思い心乱れる。
一方、吉祥は金頭洙と名乗る密偵が巨福であると確信し、ついに直接対面する。
ソウルでは趙俊九の財産を巻き上げる策略に、西姫の意を受けた龍井の孔老人も加わっていた。

【著者プロフィール】
朴景利(ぱく きょんに):1926年、慶尚南道統営市生まれ。晋州高等女学校、ソウル家庭保育師範学校(世宗大学の前身)卒。1955年に短編小説「計算」でデビュー、1957年に短編「不信時代」で 『現代文学』新人賞受賞。以後、次々と長編作品を発表し、各種文学賞を受 賞して実力派の作家としての地位を確かなものにすると同時に、韓国の女性作家の草分け的存在となった。1969年から25年間にわたって書き継がれた大河小説『土地』は代表作で あり、韓国現代文学における最も優れた作品の一つと評される。また「国民文学」として韓国で愛されてきたベストセラー小説でもある。1994年に『土地』が完結した後も小説、詩、エッセイを書き続けた。晩年には環境問題に関心を深め、江原道原州の自宅菜園で有機栽培などしながら、意欲的に執筆を続けた。2008年没。享年81歳。

【監修者プロフィール】
金正出(きむ じょんちゅる):1946年青森県生まれ。1970年北海道大学医学部卒業。現在、美野里病院(茨城県小美玉市)院長。医療法人社団「正信会」理事長、社会福祉法人「青丘」理事長、青丘学院つくば中学校・高等学校理事長も務める。訳書に『夢と挑戦』(彩流社)などがある。

【訳者プロフィール】
吉川凪(よしかわ なぎ):仁荷大学に留学、博士課程修了。文学博士。
著書『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ』、訳書『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、『都市は何によってできているのか』、『酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう』、『アンダー、サンダー、テンダー』など。
キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。